モノの名前を示す言葉

[導入問題]
身近な植物や動物・昆虫などの名前について、日本語と英語の名前を比較して、どのような関係や特徴があるかを考えてみてください。



ことば × 理科 生物分野

日本語の中に存在する言葉の全てにおいて、他の言語にも同じ意味を指し示す言葉は存在するのでしょうか。

例えば、「人」「犬」「雪」「しめじ」「津波」という日本語に相当する言葉が、他の言語にも存在するかについて考えてみたいとおもいます。

「人」や「犬」などの名詞は、言語学では「基礎レベルのカテゴリー」と呼ばれ、地理や文化に関わらずその意味を示す言葉が存在するとされています。

では、「雪」「しめじ」「煙草」「津波」についてはどうでしょうか。

雪の降らないアラビア半島の言語では、「雪」は「サルジゥ」という言葉を使います。「氷」についても同じ言葉を使っているので、雪と氷には言語上の区別がなく、水が凍っている状態を指して「サルジゥ」という言葉を使っているようです。

「しめじ」は英語で「Simeji mushroom」なので、「キノコ」を意味する「mushroom」にローマ字で日本語をそのまま付け足した形になっています。

「煙草」は漢字表記が存在し一見日本語のようにも思えますが、実はポルトガル語の「tabaco」に漢字がつけられたものです。
南蛮貿易の際に異国から輸入した嗜好品のため、名前もそのままです。

「津波」は1968年にアメリカの海洋学者がローマ字の「tsunami」を学術用語として使うことを提案したことで、近年国際語になりました。

言語学では、ある意味を表す言葉の量が多いほど、その言語を使う人における、その言葉の指し示す意味が重要であると言われています。

雨が多い日本に雨を意味する言葉が他の言語と比較して非常に多いことはよく知られています。

理科の身の回りの生物の観察では、観察の対象に一つ一つ名前をつけ、分類を行います。植物や動物、昆虫などの名前について、日本語と英語を比較して、名付けられ方にどのような特徴があるかを考えてみます。

語源が同じ言葉

「ツバメ・燕」の語源である嚥下(エンゲ)と、「Swallow」は共に「飲み込む」という意味があります。この一致は偶然と考える見方もありますが、ツバメが餌を食べるときのヒクヒクと喉を動かしているような様子とツバメを意味する言葉の関係に、全く異なった日本語と英語で共通性があるのはとても不思議です。

「Morning Glory」は「朝の輝き」という意味です。同じ花を指す言葉の「アサガオ・朝顔」と同様に、朝を意味する言葉から名詞がつくれています。

音の関係が同じ言葉

「スズメ・雀」と「ツバメ・燕」はどちらも身近な鳥で大きさなどの特徴も似ており、3文字という文字数や「ツ母音+濁音+メ」という音の構成にもその類似性が反映されています。

英語の場合においても「Sparrow」と「Swallow」で同じような関係を見ることができます。

基礎語と複合語の関係が同じ言葉

名詞には、「雀」「燕」「鹿」のように、形態素=意味をもつ最小の単位によって形成される名詞=基礎語でできているものと、「ニュウナイスズメ・入内雀」や「イワツバメ・岩燕」「コシアカツバメ・腰赤燕」のように形態素を修飾する言葉が付け加えられた複合語によってできているものがあります。

「シカ・鹿 / Deer 」と「トナカイ・馴鹿 / Reindeer」は、鹿が基礎語で、トナカイは漢字表記の馴(飼いならされた)+鹿、Rein(手綱=家畜化された)+deerという様に、基礎語と複合語の関係が同じです。

英語にはない日本語
英語では、基本的にきのこは「mushroom」です。「シメジ・占地」や「シイタケ/椎茸」のように英語にない言葉はそのままローマ字表記の日本語に抽象的な分類を示すことばを連ねて表現しています。

日本語が語源の言葉
「ダイズ・大豆」は英語で「Soy」ですが、これは「醤油/Shoyu」がマレー語、オランダ語を経て17世紀に英語化した言葉です。

他の生物の特徴からつくられる複合語
「カブトムシ・甲虫」、「タンポポ・蒲公英」はそれぞれ英語で、「Rhinoceros Beetle」「Dandelion」です。「Rhinoceros」は「サイ・犀」
「Lion」は「シシ・獅子」なので、どちらも他の動物の形態的な特徴から複合的につくられた名詞です。


日本語は基礎語、英語は複合語
「フグ・鰒 河豚」「サザエ・栄螺」は、音は形態素からなり、漢字は異なる意味を持つ漢字の組み合わせです。また英語ではそれぞれ「Blow(吹く)+fish」「Turban(インド人やイスラム教徒が頭に巻いている布)+Shell(貝殻)」という複合語です。

「ハマチ・魬 ブリ・鰤」は生物学的には同じ魚ですが、日本語では大きさによって名前が変わる出世魚です。しかし英語にその区別はなく、どちらも「Yellowtail」で直訳すると「黄色い尻尾」です。

「ヒマワリ・向日葵」は、「アオイ・葵」の文字が使われていますが、「アオイ科」ではなく「キク科」の植物です。太陽に向かって成長する向日性(コウジツセイ)がアオイと同じということからこの漢字がつけられています。英語は「Sunflower」で「太陽の花」という複合語です。

「ダンゴムシ・団子虫」、「クワガタムシ・鍬形虫」は「Pill(錠剤) Bug(害虫)」、「Stag(雄鹿)+Beetle」です。これらは日本語も英語もどちらも複合語によって表現されます。

「ナス・茄子」は、英語で「Eggplant」=「卵のような植物」です。

名詞で区別する、まとめる
「イナゴ・稲子」は漢字一文字で「蝗」という書き方があります。飛ぶ蝗で「バッタ」ですが、英語ではどちらも区別することなく「Locust」です。

日本語の場合、「カモ・鴨」と「アヒル・鶩」は同じ鳥を差しますが、野生の場合はカモ、家禽化(カキンカ)されている場合はアヒルというような区別が存在します。英語では、これも区別せず「Duck」です。

英語の「Rice」は「イネ・稲」だけでなく、「米」や「ご飯」にも使う単語です。逆に日本語の「ムギ・麦」は英語の場合、その種類によってそれぞれに基礎語が存在しますが、日本語では、種類が異なる場合に、「麦」を前の言葉が修飾する形の複合語としてそれらを表現します。

言語を構成する品詞のうち、もっとも基本的な名詞ですが、少し入り込んで考えてみると、全く違う文化圏の言葉の中にも、その共通性を見ることができます。

日頃は気に留めていなかった身の回りの色んなモノの名前について、形態素や基礎語・複合語、音の関係などに注目して、あらためて考えてみると、新しい何かを発見できるかもしれません。

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モノの関係を示す言葉

[導入問題]
写真のモノについて、次の問いに答えてください。
(1) 名前を日本語と英語で答えてください。    
(2) 写真と関連が深い動詞を探してください。
(3) 写真と関連が深い形容詞を探してください。

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